喉(のど)とは
咽頭(口腔・鼻腔・食道の上端)と気管上部の喉頭までの範囲がのどになります。ここでは、食道や胃に食べ物を送り込む、肺に空気を届ける、発声するといったことが行われています。このようにのども様々な役割を果たしているわけですが、この器官で起きた異常や症状、病気につきましても当診療科の範囲となります。気になることがあればお早めにご受診ください。
以下のような症状があれば一度ご相談ください
のどが痛む、のどに違和感を覚える、味がわかりにくい、咳や痰が出る、痰に血が混じっている、声がれしている、いびきがうるさい、食べ物などが飲み込みにくい など
主なのどの疾患
急性咽頭・扁桃
急性咽頭炎は、咽頭に炎症が起きている状態です。その原因は、ウイルス・細菌の感染、粉塵や刺激ガスの吸入、喫煙、声の酷使などによって粘膜が炎症することによるものです。主にのどにかゆみや痛みがみられるほか、悪化し喉頭や気管に炎症が及ぶと咳や痰の症状を伴うことがあります。
急性扁桃炎は口蓋扁桃(口蓋垂の左右に1個ずつ存在)が炎症を起こしている状態で、多くはウイルスや細菌に感染することが原因となります。主に強い咽頭痛と高熱や寒気、頭痛、全身倦怠感、関節痛といった風邪のような症状、首のリンパ節腫脹、食欲低下などがみられます。このほか、のどの奥をのぞくと、両脇が赤く腫れていたり、白苔(白い異物のようなもの)が扁桃に付着しているのが観察されます。なお小児の場合は、あまりののどの痛みから口からの栄養摂取が困難となり、脱水症状を引き起こすこともあります。
伝染性単核球
EBウイルスに感染することで発症する扁桃炎のことです。これは思春期以降になって初めて同ウイルスに感染したという方にみられる疾患です。感染後、6~8週間の潜伏期間を経てから発症し、のどの痛み、発熱、首のリンパ節の腫れ、皮膚の発疹がみられるほか、肝臓や脾臓も腫れて大きくなってしまうので、できるだけ安静に努めることが大切です。
扁桃周囲膿瘍
急性扁桃炎による炎症が口蓋扁桃だけでなく、その周囲にも広がっていき(扁桃周囲炎)、扁桃の外側に膿が貯留している状態を扁桃周囲膿瘍と言います。この場合、のどの腫れや激しい痛みによって口が開きにくい、唾液すら痛くて飲み込みにくい、発熱、口臭などの症状がみられるようになります。なお、症状がひどくなると、のどの腫れによって息苦しくなるほか、のどの痛みが強くなると飲食ができなくなるので脱水症状を起こしやすくなります。さらに放置すると頸部膿瘍といって扁桃のさらに外側の首の皮膚の下に膿瘍ができてくることもあります。早めにご受診ください。
アデノイド増殖症
アデノイド(咽頭扁桃)は、はなの奥にあるとされるリンパ組織のことで、3歳頃から増大していき、4~5歳頃に最も大きくなりますが、成長につれて10歳頃にほとんど消失します。アデノイドの肥大は病的な意味を持ちませんが、これが大きくなることで鼻づまり、口呼吸、いびき、睡眠時無呼吸症候群、滲出性中耳炎を引き起こすことがあります。この肥大に伴って起きる様々な症状を総称してアデノイド増殖症と言います。なおアデノイドは年齢とともに縮小し、小学校高学年になると小さくなるので、症状が軽度なら積極的な治療はしません。
扁桃肥大
口蓋扁桃が肥大している状態が扁桃肥大です。口蓋扁桃は6歳頃をピークに大きくなっていきますが、その後は成長するに従って自然と小さくなっていきます。軽度であれば自覚症状はありませんが、口蓋扁桃が大きいことでいびきをかいている、睡眠時無呼吸症候群を引き起こしている、または年に4〜5回程度は扁桃炎を繰り返しているという場合は、口蓋扁桃を摘出する手術などが検討されます。
口内炎
誰もが一度は経験したことがあるかと思いますが、口腔の粘膜に起きた炎症(びらんや潰瘍 など)の総称が口内炎です。主にビタミン不足、疲労やストレス、ウイルスなどの感染症、口の内側を噛んだ際の刺激などが発症の原因とされ、治療はせずとも数日程度で痛みや腫れなどは治まるようになりますが、痛みを早めに取り除きたい場合は軟膏を患部に塗布して軽減させるようにします。なお口内炎の症状が長引く、何度も繰り返すという場合は、何らかの病気(ベーチェット病、口腔がん など)や薬剤の影響ということも考えられますので、この場合は医療機関をご受診ください。
味覚障害
味覚障害とは、食事をしても味を全く感じない、味覚が鈍磨している、本来の味とは違った変な味に感じるといった症状のことを言います。原因は様々とされていますが、大半の場合は原因不明の特発性、ウイルス感染後の味覚障害ですが、亜鉛や微量元素欠乏に伴う味覚障害もあり、亜鉛や微量元素欠乏による味覚障害は亜鉛、微量元素を補充することで症状改善が可能です。また、鉄欠乏性貧血による舌炎や口内炎なども同症状を起こしやすいとされています。
主な症状は、味覚(甘味、酸味、塩味、苦味、旨味など)の低下、何を食べても味がしないなどです。また、口の中に何も入っていないのに塩味や苦味を感じる、何を食べてもまずく感じるということもあります。
新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚障害はこちら急性喉頭蓋炎
喉頭蓋とは声帯・気管の前方にある蓋状のもので、食べ物や水分が気管に入らないようにする気管に蓋をする役割があります。ウイルスや細菌の感染により喉頭蓋が炎症を起こして腫れた状態を急性喉頭蓋炎と言います。喉頭蓋が腫れるとすぐ後ろにある気道(空気の通り道)を塞いでしまい窒息する危険がありますので要注意です。小児にも成人にも起こりうる疾患で緊急性が高いので、風邪などの上気道感染の際には軌道を閉塞しうるような腫脹がないかをしっかり確認することが重要です。耳鼻咽喉科でないと基本確認できない場所なので風邪などの上気道感染の際は耳鼻咽喉科への受診をお勧めします。
主な症状ですが、発熱や激しいのどの痛みが突然みられるようになります。そのほかにも楽に呼吸をしたいので前かがみの姿勢になる、息を吸い込むときにヒューヒューと狭窄音が起きることがあります。狭窄音が生じた場合は軌道閉塞による窒息の危険性が極めて高いため耳鼻咽喉科への緊急受診が必要です。
声帯の疾患
声帯は声を出す器官で主な病気に、声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、喉頭肉芽腫、喉頭がんなどがあります。
声帯ポリープは、声帯の粘膜に発生する良性の腫瘤のことで声の酷使や咳刺激で血腫(血豆のようなもの)ができるようになって、これを繰り返すうちに血腫が器質化しポリープになったものです。のどの違和感や声がれなどの症状が現れます。声帯結節は、声の使いすぎなどによる原因で声帯に結節(こぶ)ができている状態を言います。ちょうど指にできるペンダコのようなものです。声がれ、のどの違和感などの症状が出ます。ポリープ様声帯は、声帯が酷使(飲酒、喫煙、大声を出し続ける)されることで全体的に浮腫になり浮腫が治らなくなった状態です。声がれ、のどの違和感のほか、腫れがひどいと呼吸が苦しくなることもあります。
このほか喉頭肉芽腫は、咳ばらい、胃酸の逆流、手術時の気管内への管の挿入などを原因として起こるもので、声帯の後部が腫れるほか、のどの違和感や痛みなどが出ます。また喉頭がんは、喉頭部分に発生するがんのことで喫煙が原因となることが多く、高齢者の男性によく見受けられます。のどの痛みや違和感や、声がれ、血痰などの症状が出て、がんが進行すると呼吸が苦しくなります。
遷延性/慢性咳嗽(長引く風邪)
風邪の症状だと思っていた咳が3週間以上続いているのであれば、感染症以外の原因による疾患が考えられます。なお3~8週間咳が続いている場合を遷延性咳嗽、8週間以上続いている咳のことを慢性咳嗽と言います。
気管支の粘膜はターンオーバーにかかる時間がほかの粘膜上皮と比して長いため、気管支炎後に咳が長引くことがありますが、通常8週以内に治まることが多いです。8週以上咳が続く場合、最も可能性が高いとされている病気が咳喘息(呼吸困難や喘鳴はなく、症状は咳のみ)です。そのほかにもアトピー咳嗽、副鼻腔気管支炎症候群(気管支拡張症・副鼻腔炎)、逆流性食道炎、慢性気管支炎、感染後咳嗽、薬剤による咳嗽というケースもあります。咳が2カ月以上続くという方は、一度ご受診ください。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群についてはこちら反復性(習慣性)扁桃炎
急性扁桃炎を年4回以上、もしくは2年で5~6回以上繰り返しているという場合を反復性扁桃炎と言います。繰り返す扁桃炎で日常生活に支障をきたしている場合には、口蓋扁桃摘出術による手術を行うことをお勧めします。なお、炎症している状態では摘出術をすることはできませんので、腫れが引いてからの対応となります。手術にあたっては入院をする必要があります。